世界に誇る究極の美 第2回 群がるタマムシ ヤマトタマムシ-5

世界に誇る究極の美 第2回 群がるタマムシ ヤマトタマムシ-5

タマムシのふるさと「奥秩父」へ

 柄が2メートル以上ある捕虫網を購入し、いざタマムシ採集に。しかし、あそこでの採集には最低限の常識を持った一般人には難しい。天気のいい日はいつも誰かがカメラで猛禽類の飛翔姿を待ち構えている。天気の悪い日ならばカメラマンはいないが、タマムシもいない。晴れた気温の高い日にしか現れない。ある意味、夏の虫であるが、そんな暢気なことも言ってられない。とにかく、あの場所以外では全く見ることができないのだ。日本の美を代表する昆虫であるタマムシを捕獲できなければ、この企画も徒労に終わってしますう。さて、どうしたものか。こんなときはやはりネットだろう。

奥秩父は山深く、自然に溢れている


 あるあるある。秩父の奥にその村は存在する。その名も「玉虫の会」。堂々とタマムシを謳っているので、期待できるものの、記事が古いのが気になる。もう、存在しないのかもしれない。
 そんな不安はともかく、とにかく行って見なければ。玉虫700匹の鞘で作ったミニ八角堂も展示されているらしい。まずは電話で確認。八角堂はいまでも展示されているのだが、玉虫の会は、ほとんど活動していないとのこと。ガックリ。それでもタマムシは飛び交っているらしい。やはり行って見なければならない。「玉虫の会」の会長さんが経営する民宿を目指す。

連絡を取った民宿

 秩父はかなり遠いというイメージだったが、意外と早く到着できた。しかし「玉虫の会」がある地域はさらに奥へ進まなければならない。山間の村を想像したが、目的の地区には住宅が多く、民宿を探すのに時間が掛かってしまった。なんとか、お昼前にはどうにか辿り着く。クルマを降りると平地と違い涼しいのかと思ったが、やはり暑かった。それでも民宿の玄関に入ると涼しい空間が。もちろん冷房もかけてない。しかし涼しいということよりも、あるものに視線が釘付けになる。

民宿の玄関には「玉虫の会」の資料が


 玄関横にある靴棚の上に貼られているのは「玉虫の会」会員の名前が毛筆で列記された木版。他にも「玉虫の会」の案内用のチラシや写真が所狭しと並んでいる。しかし暑さも忘れさせたのは、棚の上に無造作に置かれたプラスチックケースだった。ガサゴソと背筋が寒くなる音を発生しているのは無数のタマムシだった。ケース自体は幅20cmほどの小さなものなのだが、光り輝くその虫が何十匹と蠢いているのだ。葉(エノキかケヤキ)がギュウギュウに詰まったケースのプラスチック面に張り付いたタマムシたちは休むこともなく動き回っている。みな、光り輝いているのだ。こんなことがあるのだろうか。あまりの驚きに、見とれてしまった。一匹でも十分なのに、数え切れない多頭の光沢は眩しすぎる。その妖しい輝きに見とれてしまう。生物ではない想像上の生き物が蠢いているように見える。玉虫厨子にしても、昔から人を魅了する美しさを備え持つ希少な昆虫であるのは確かだ。それが生きて蠢いているのだから、昆虫ファンならずとも魅かれてしまうだろう。

無造作に置かれたケースには無数のタマムシが蠢いている

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