昆虫フィギュアの挑戦-5

昆虫フィギュアの挑戦-5

一つ一つを手作りで量産

 小暈さんは原型師である。一番重要なのは原型を作ることだが、個人で作品を売ってもいるので、量産もしなければならない。しかし、食玩や、ガチャポンの景品のように中国で大量生産をするというわけにはいかない。商品としてのフィギュアを完成させるまで、全てのプロセスを一人で行うことになる。それにはかなりの労力と時間が必要になる。その工程をここで簡単に紹介する。

小暈さんは数少ない彫師(ほりし)。造型師の多くは粘土を盛りながら製作する。つまり、粘土で仕上がりに近い形まで作り上げる。しかし、茂木さんは細かい作業をじっくり時間を掛けて、より精密な加工を行う“彫り”にこだわっている。質感や精密さは彫りによる成果である。

 下の画像はナミアゲハの幼虫フィギュアを製作工程順に並べたもの。この写真で製作工程を説明する。左から①~⑤とする。

ナミアゲハの原型からガレージキット、完成品(クリアコート前)までを製作工程順に並べる。

① 原型:小暈さん得意の彫りにより製作された原型。グレイカラーなのは仕上げを均一にするサフェーサーが塗られているため。この原型からシリコン製の型を作成する(右上写真参照)。
② ガレージキット:型にキャスト(原料)を流して、造られたガレージキット。
バリ等はカッターで綺麗に削ってある。
③ 下地塗り:色付け効果アップのため全面にプライマー塗装後、ラッカー系のエアブラシで全面を一色で塗る。赤の発色をよくするため、イエロー系の塗料を使用。
④ 色塗り:写真はエアブラシで赤色を塗布した後。色ごとにマスキングを繰り返し、計9回の塗装をする。マスクは右下写真を参照。
⑤ 筆入れ:鉛筆等を使って模様や影を加える。
これにクリアコートをコーティングし、裏面に留め金(アタッチメント)を付ければ立派なピンズ(ピンバッチ)の完成。
さて、これを何につけるか。悲鳴が上がるかもしれないので、使用時は充分な注意が必要ではある。

ナミアゲハの幼虫の型。サフェーサーを塗布した原型を元にシリコンを使用して型を作る。上下の型を合わせて、原料を流し込んで塗装前のガレージキットを作成する。
塗装はコンプレッサーを使ったエアブラシで行う。通常、細かい箇所は筆で色を塗るが、茂木さんはマスキングを利用して、エアブラシで塗装する。この流儀にこだわるのは、発色、微妙なグラデーション、再現性を維持するためである。
塗装のマスキングは通常テープなど使用するが、手間が増える割には再現性が低くなるので、茂木さんはマスクという型を使う。このマスクも一色ごとに手作りする

第一話

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