世界に誇る究極の美 第3回 ハンミョウ-3

世界に誇る究極の美 第3回 ハンミョウ-3

斑猫 なぜに猫?

 日本では、ハンミョウはその特性から「みちおしえ」「みちしるべ」と呼ばれていた。ハンミョウは人に会うと、からかうかのように先を歩き、離れると立ち止まり人が近づくのを待つ。その姿が道を教えているように見えたからである。それがいつの間にかハンミョウとなってしまった。
 ハンミョウは漢字で書くと「斑猫」。そのまま読めばマダラネコである。ブチネコと読む人もいる。斑はまだ理解できるが、なぜ猫なのだろう。
 この漢字は他の虫同様に中国から伝わってきた。仕草が猫に似ているのでつけられたという一説があるが、英語では「tiger beetle」。虎のような昆虫だ。獰猛な狩から、その名が付けられたようだ。確かに同じ猫科ではあるが、虎と猫ではまったく異なる。その凶暴さからは虎のほうが合っているように思える。

ひっくり返すと獰猛な姿が。虎というより、ウルトラシリーズに登場した凶悪な宇宙生物にも見える。


 ただ、ハンミョウが他の虫と違うのは、その軽妙な走りである。飛翔すればより早いのだが、なぜかハンミョウは走る。その姿は軽快でしなやかである。その走る姿は確かに猫に似てはいる。
 中国では、その昔、まったく違う字があてられていた。常用漢字にはないのだが、「斑点があり矛のように刺す虫」という意味を持っていた。それが斑猫に訛ったというのが事実らしい。その斑猫も日本のハンミョウとは違い、ツチハンミョウとのこと。日本では違うハンミョウが「みちおしえ」を駆逐してしまったのは、誠に残念である。昆虫の名前はこんなケースが多い。

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