快適オケラ生活 第2話

快適オケラ生活 第2話

どこにいるかは知らないけれど、誰もがみんな知っている

 この「オケラ」、実は有名な割には目にすることは余りない。かと言って、タガメや一部のゲンゴロウのように絶滅危惧種にされるほど数が少ないわけではない。ほぼ24時間、土の中で過ごしているので、ほとんど目にすることがないからだろう。そのため、採集しようとしても、見つけることが難しく、希少価値が一部の世界では高くなっている。現に、私も40年以上生きているが、成虫を見たのは1回しかない。どうでもいい情報だが、京都府では「レッドデータブック」に掲載されている。その「選定理由」が傑作。

選定理由:畑地や水田の畦に生息する。絶滅の心配はまったくないが、近年の減少傾向が著しいので、今後の動向に注意する必要がある。

心配ないのに、見かけないから居なくなったような気がするだけで、レッドデータとは。動向に注意はするが、きっと保護はしないのだろうなあ。悲しい生物である。

オケラはどこにでもいるが、ほとんど見つからない。だからレッドデータに。

 飼育を決めた理由は、この希少価値の高さもあるが、その機能性を追求したフォルムである。これはゲンゴロウの飼育と同じである。名前の割には見かけることが少なく、ショプでも余り売っていない。そして、精錬されたボディの形状だ。
 何と言っても、あの前脚。シャベルのように湾曲した形状で、土や砂を効率よく後方へ送ることが可能だ。さらに前脚の先が潮干狩りの熊手のように枝分かれ(まるで指のよう)しており、草の根やごみなどがあっても切り裂くことができる。その前脚は他の部位に比べ、かなりの硬度があり、粘性の高い土でも対応できる。そして、ドングリのような頭部。前脚で掘り起こした土や砂を抵抗なく、後方に送るに相応しい流線型。こちらも硬く、掘削スピードを上げても充分耐えうることができる。その機能を最優先した上半身は、工事現場の重機のように、プロフェッショナルを感じる。その機械的なフォルムは男子の永遠の憧れでもある。それに反して目が可愛いのも捨てがたい。全く同じような生活形態と形状を持った哺乳類にモグラがいる。子供のころ、一度捕まえたことがあるが、愛くるしいという言葉が見事に当てはまっていた。どちらも、畑を荒らす有害動物であり、有名な割には見ることが少ないということが共通点。嫌われものではあるが、飼育欲をそそる。

掘削するためのフォルム

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