快適オケラ生活 第5話

快適オケラ生活 第5話

採集はいつもゴールデンウィーク

 5月の連休。久々の帰省だ。
 それまで、オケラのことは何度も兄にメールしていたが、全く返事が返ってこない。相変わらずの常識知らずだ。その不精な対応にいつも期待は薄れる。
 水生昆虫ハンターの父が亡くなった家では、母と兄が二人で暮らしている。まだ嫁がいないので(永遠に来ないと思うが)、実家に行っても全く気を使わないのはありがたい。なので、昼食を済ますと、女性陣(母親と妻)はガーデニング店へ、自分と長男と兄の3人でオケラの採集に向かった。オケラの情報は本当かどうか相変わらず確証なしだったが、場所だけははっきり覚えているので多少期待は持てる。ただ、この日が初の挑戦だったので、まずは様子見という気持ちではあった。だから、それほど気持ちが昂ぶってはいなかった。

目的の採集場所は、やはり人里離れた山間だった。


 山の麓といっていたが、都会暮らしの長い身にとっては結構坂道を登るので山腹という感覚だ。まあ、クルマで行けるので、苦労はしないのだが。ブドウをはじめとする果樹園を見渡しながら、兄の指示に従い向かうと、空気も澄んできて、高原で味わうような爽やかな気持ちになってくる。遠くには市街地が見渡せ、中腹ぐらいは過ぎているはずだった。それでも、所々に集落があり、クルマの通らない道にある信号に、何度も躓く。地味な信号を指摘どおり左折すると、クルマ一台やっと通過できる幅の狭い道だった。あたり一面、果樹園が見渡せるのに、その道だけは塀に囲まれており、とにかく狭い。もちろんミラーもないので、対向車があったら、衝突することもあり得る。土地に余裕のある山間でも、やはりポツンと家を建てるのは不安なのだろうか。意外と家並みが続いている。左手には役所のような立派なビル(と言っても3階建てぐらいだが)もあるではないか。何故こんなところに、と疑問に感じるが、後でそこが葬儀場と知り納得。その建物の直ぐ横を兄の指示に従い左折して、昔ながらの農家にある私道の先にある、ほぼ庭である駐車場に車を停める。ここは兄の知り合いのギャラリーなのだが、特に展示しているものはない。

 そこのオーナーともオケラのことを一言二言。「改めてオケラを意識したことがない」とのこと。よく見かけるが、それに希少価値があるなどとは思いも寄らないだろう。オケラよりも多く見かけるカブトムシやクワガタには市場価値のあることはわかるが、穴を掘っているだけの虫けら(まさしくケラ?)に興味を持てるはずがない。それでも久々にオケラに会える。それだけで気分が高揚する。

オケラはあっと言う間に土の中へ。
この一連の動作は素晴らしい。

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