虫を彫る 仏師「杜虫然」

虫を彫る 仏師「杜虫然」

仏師「杜虫然(もりちゅうぜん)」

 上の写真で睨みあっているのは、コノハムシとカレハカマキリ。名前の通り、木の葉や枯葉に擬態した東南アジアの昆虫。これを作ったのは、杜虫然(もりちゅうぜん)という仏師。驚くべきことに、これは木彫りの作品である。実物を見れば、とても木を削って作り上げたとは思えない精密な造形に驚くはず。実物をお見せしたいところだが、今回は拙い写真で我慢していただきたい。ホント、すみません。

 初めて目にする木彫の昆虫ということにも驚いたが、その見るものに迫ってくる美術的品質の高さに思わず「う~ん」と唸ってしまった。昆虫採集中だったこともあり、その斬新な創作に興味を抱いたのも仕方ないだろう。
 好奇心に惹かれ、この作品が飾られているギャラリーのオーナーに訊ねたところ、虫然氏は知り合いだっとを聞かされる。折角なので詳しく話を聞こうと思ったのだが、残念ながらご本人はすでに他界されていた。直接、お話を聞くことはできなかったが、オーナーを始め、多くの方からお話を聞いたので、遺された作品と共に、制作者の杜虫然氏の人となりを紹介する。
 作者である杜虫然氏は、妖怪漫画で高名な水木しげる氏のアシスタントを皮切りに、まさしく創作に一生を賭けた、という豪放磊落な芸術家のイメージ。そして最後にこだわったのが虫であったと云うのが、この雑誌の読者には嬉しい限り。折角なので作品の一部(虫を中心に)を、皆さまにお見せしたい。今回の記事と写真で更なる興味を抱いた方は、是非、このギャラリーを訪ねて本物を見ることをお薦めする。手の届くような場所に何気なく置かれているので、「これ?」と思ってしまうかもしれないが、そのときは目を凝らして観察していただきたい。心に感じるものがきっとあるはずである。

擬態する昆虫同士で化け合戦を繰り返しているらしい。

虫然氏の紹介ホームページはこちら

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