快適オケラ生活 第18話

快適オケラ生活 第18話

秋来る

 9月も下旬になり、やっと涼しくなってきた。毎年、9月中旬まで真夏日が続くのでは、身がもたない年齢になっているので、ホッと一息。一気に涼しくなると、いよいよ行楽シーズンに突入。そして虫たちにとっては、繁殖の季節になるはず。しかし、残念ながら家のオケラたちに、その様子は窺えない。窓の外では秋の虫が嫁さん募集の大コーラスだが、ケースは物音一つしない。やはり、かなり数がいるので、相手に不自由しないので嫁選びには困らないからだろうか。それともう一つ不安が。我が家のオケラたちは成体になっていないような気がしている。ケースの外からしか覗いていないが、大きさも変わっていないし、羽があまり伸びていないのだ。どういうことだろう。このままでは幼体のまま冬を迎えてしまうではないか。オケラは一冬越してから繁殖行為に及ぶのか、これから冬までの短い期間で全て片付けてしまうのか、少し不安になってくる。とりあえずもう少し様子を見るしかない。

田んぼはすっかり黄金色に。


 そんな状況の中、また採集場所へ行く機会を得た。もしかしたら、卵を抱えた親虫を捕獲できるのではないのか、という淡い期待もあった。季節は確実に秋になり、周辺の田んぼもすっかり小麦色となり、果樹園では葡萄狩りが真っ盛り。でも採集は、はっきり成体とわかる固体は少なく、オケラを何匹か確認したものの、まだ幼体だったので、採集する気にはならなかった。最初に発見した水路には水が流れ込んでおり、泳ぐ個体を発見したものの、やはり成体とはいえない羽だった。泳ぎは上手いと聞いていたが、実際見ると溺れているようにしか見えない。産毛が水を弾いているので浮いているだけだろう。決して泳ぎの達人ではないが、一生懸命さが伝わってくる。思わず「頑張れ!」と応援するのだが、写真撮影のために再度水面に放って、無理矢理泳がせてしまう。極悪非道。

決してうまいとは言えない。とても螻蛄才(けらさい)とは…。


 とは言っても、結局3匹ほど捕獲したので、ついでに大掃除。タマゴでも産んでないかとの期待を持ったりもしたが、やはり見つからないし、気配もなし。大きさも変わっていないような。本当に育っているのだろうか、と不安を感じたが、後で写真を見ると、以前に比べて羽の生えている固体が増えているではないか。8月の終わりの写真では5匹もいなかったが、今回は10匹以上はいる。裸虫を卒業し、螻蛄になり始めている。少しずつ成長していることに満足。そして、久々に図鑑を見ると、雌雄を見分けるには充分な羽の長さのようだ。勝手に短すぎると考えていたようだが、これで充分な長さのようだ。飛べるのかなあ、という疑問は置いといて、よく見ると、雌雄の判別も可能だ。肉眼で見てもわからなかったが、写真で改めて見直すと♂も♀も確認。羽の翅脈が規則正しいのが♀。規則的でないのが♂。写真を拡大すると見分けられる。確かに♀の方が少し大きい固体が多い。よし、後はベビーの誕生を待つだけだ。秋の夜は長いから是非頑張ってほしい。

翅脈で判断。♀?
こっちは♂?

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