昆虫界最強のトラップ職人-4

昆虫界最強のトラップ職人-4

トラップのある砂場

 アリジゴクはゲンゴロウのようにレッドデータでも、オケラのように捕獲困難でもない。すり鉢状のトラップはいたるところで見ることが可能だ。ただ、虫本体は小さく、魅力に欠けるのも確か。その独特の捕獲方法は興味を掻き立てるはずだが、なぜか飼育までには至らない。トラップは面白いのだが、虫自体は地味なのである。その上、いつも砂に隠れているため、目にすることも少ない。テレビやネットで取り上げることも滅多にない。やはり、目立たない存在である。その人気のない虫を育てようと思ったのは、何度も言って申し訳ないが、あの美しいトラップである。合理的、機能的でありながら、幾何学的な形状は小さな虫が作ったとは思えない。同じトラップを使うクモの巣も、確かに自然的ではない美しさがある。
 あのトラップを自分の部屋に再現したい。その一心でアリジゴクを飼うこにを決める。

芸術的なトラップを自分の部屋に再現する


 早速、採集である。
 どのような場所にいるのかはわかっている。砂場である。もちろん公園の砂場にはいない。家や建造物の軒下が最も発見されるポイントだ。しかし、昨今では軒下の砂地などほとんどみられなくなっている。しかし、安心していただきたい。そう、神社・仏閣の社があるではないか。アリジゴクの採集は、広場や河川敷の砂場となっていたが、いまでは生息できるような環境はなくなっている。ただ、神社などは、わたしの子供のころとほとんど環境が変わっていない。絶好の採集ポイントである。迷うことなく、神社に向かうことになったが、念のため、山間にある社を選んだ。

山間の神社。神社はいまだにひっそりとしている。それだけ神聖な場所なのだろう。そんな場所で昆虫採集という殺生を行うことは許されるのだろうか。

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