トラップのある砂場
アリジゴクはゲンゴロウのようにレッドデータでも、オケラのように捕獲困難でもない。すり鉢状のトラップはいたるところで見ることが可能だ。ただ、虫本体は小さく、魅力に欠けるのも確か。その独特の捕獲方法は興味を掻き立てるはずだが、なぜか飼育までには至らない。トラップは面白いのだが、虫自体は地味なのである。その上、いつも砂に隠れているため、目にすることも少ない。テレビやネットで取り上げることも滅多にない。やはり、目立たない存在である。その人気のない虫を育てようと思ったのは、何度も言って申し訳ないが、あの美しいトラップである。合理的、機能的でありながら、幾何学的な形状は小さな虫が作ったとは思えない。同じトラップを使うクモの巣も、確かに自然的ではない美しさがある。
あのトラップを自分の部屋に再現したい。その一心でアリジゴクを飼うこにを決める。
早速、採集である。
どのような場所にいるのかはわかっている。砂場である。もちろん公園の砂場にはいない。家や建造物の軒下が最も発見されるポイントだ。しかし、昨今では軒下の砂地などほとんどみられなくなっている。しかし、安心していただきたい。そう、神社・仏閣の社があるではないか。アリジゴクの採集は、広場や河川敷の砂場となっていたが、いまでは生息できるような環境はなくなっている。ただ、神社などは、わたしの子供のころとほとんど環境が変わっていない。絶好の採集ポイントである。迷うことなく、神社に向かうことになったが、念のため、山間にある社を選んだ。