昆虫界最強のトラップ職人-5

昆虫界最強のトラップ職人-5

トラップ作りの職人技

 捕まえたアリジゴクは5匹。大きさもさまざま。
 幼虫は1齢~3齢まで。小さいのが2齢、大きいのが3齢ではないだろうか。以前飼育したオケラは10齢まであったが、やはり不完全変態と完全変態の違いだろう。3齢の後は、蛹という一大イベントが待っているのだ。

大小5匹のアリジゴクを捕獲。砂から出るとほとんど動かないので、最初は死んでいるのかと思ってしまった。五匹とも無事に羽化してほしい。


 ネット情報を真に受け、ペットボトルで飼育ケースを作成。一匹ずつを分けて飼育することにする。ケースの下半分は土。家の近く、もしくは家庭菜園用の土を敷き詰める。これは湿度を保つために必要とのこと。上半分はアリジゴクを採集した場所の砂を敷く。この砂であるが、いわゆる海岸や砂場の砂ではない。正確にはシルトと呼ばれる細かな土の粒子である。粒子の細かい順に、粘土→シルト→砂と呼ぶらしい。ただシルトはあまり聞き慣れていないので、今回の話は砂で通すことにします。トラップを作る砂の層は常に乾いている印象がある。自然化では雨が降り、水があふれることもあるのだが。そのようなときは、彼らはしばらくそのまま放っておき、乾燥してからトラップを作り直すらしい。梅雨の季節などは、さぞかし大変な毎日なのだろうと思われるが、彼らは長期間食べなくても問題ないようだ。年中食べていなければならない、蝶や蛾の幼虫とは異なる。栄養が取れないときは、ただジッとして、エネルギーの消費を最小限に抑えるのだ。怠け者である、運任せの一生である。ちょっと、うらやましいような気もする。

ネットで知ったペットボトルの飼育ケース。結局、巣をつくってくれないので、途中から昆虫ケースに変更。

 それぞれの飼育ケースに投入すると、あっという間にトラップを作る。後ろにしか進めない身体構造をうまく使いこなし、らせん状に下がりながら砂に潜る。しかし、それだけではすり鉢状の窪みとはならない。実は、そこからが職人芸を発揮する。
 自分の軌跡で雑な窪みを作った後、砂を放り投げながら最終的な微調整を行うのだ。その際に、大きな顎を使って、大きな粒は遠くへ、小さな粒は近くへと放る。そして、トラップを完成させる。そして、アリなどの獲物が罠にはまったら、砂をえびぞりに投げつけ、トラップの底まで滑らせる。単純でありそうなトラップは、かなり計算されている。もちろん、アリジゴクに思考力などはない。自然淘汰でつかんだ誰にもまねできない技なのだ。

螺旋を描きながらバックをして砂に潜る。もちろん、これだけではトラップはつくれない。ここから砂を放り投げて完成させるのだ。

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