昆虫界最強のトラップ職人-6

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悩ましき給餌

 アリジゴクを飼う上で最大の問題は餌である。アリジゴクなのだからアリを与えれば問題ないのは確かなのだが、生き餌は避けたいというポリシーがあった。別に残酷だとか、不快だとかではなく、ただ可哀想と思ってしまう。ゴキブリさえも手で捕まえ、遠くに逃がす性格である。生きたアリを捕まえてきて、飼育という遊びのために殺生する行為ができないのだ。それならば、最初から生き餌しか食べない昆虫など飼うべきではないのだが、それほど深くは考えていなかったのも事実。仕方がないのだが、餌用の虫を飼うことにする。餌を飼うと言うのは、おかしな話だが。アロワナ、カメレオン、カエル等々。よく飼育できるものだと、感心してしまう。
 ただアリは避けることにした。やはり、可哀想だし。あんなに一生懸命働いている虫を餌にするのは忍びない。ということで、餌に選んだのはワラジムシ。聞き覚えのないヒトも多いかと思うが、ダンゴムシに似ていて、丸くならない表面のやわらかい虫。よく、土の中や側溝の泥に生息している。はっきり言えば見てくれだけで、餌に決定した。申し訳ないのだが、他に考えがつかなかった。早速、泥の中や水田の畦に蠢くワラジムシを大量に採集し、棚の引き出しの中でこっそり飼うことにした。アリで生じるような情はまったくなかった。ひどい話である。

餌にしたワラジムシ。丸まらないダンゴムシという体裁。体表も柔らかく、湿っていないとすぐに乾いて死んでしまう。

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