昆虫界最強のトラップ職人-8

昆虫界最強のトラップ職人-8

飢餓にも耐える精神力

 3日に一回の給餌。ときには2日続けても給餌することもある。ワラジムシには直ぐに反応するのだが、自然界ではこれほど簡単にエサにありつけることなどあり得ない。トラップは立派だが、エサが迷い込むことが最低条件である。地面を這いずり回るアリにしても、毎日一匹だけトラップに掛かることなど確率的にはかなり低いはず。確かに、ベストポジションにトラップが作れれば、結構大量のエサの確保ができるが、中にはほとんどエサにありつけない個体も多いはず。場所を移動するればいいのだが、それでも格段の成果など期待できない。多くの固体が飢餓に耐えているのだろう。どうやらアリジゴクは、一度捕食すると、3カ月程度ならば絶食に耐えられるらしい。待っているだけのアリジゴクでは、この程度の我慢は生きていくうえでは仕方ないと思えるのだ、そうなるとエサを十分にとった固体と、とれなかった固体では成長に差があるのではないのだろうか。

アリジゴクはエサが罠にかかるまで、砂の中でじっと耐え忍んでいる。


 アリジゴクは三齢幼虫まで脱皮で成長し、やがて蛹となり、そして羽化して、ウスバカゲロウとなる。その過程に差が出てくるらしい。秋までに三齢まで成長するものもいるが、十分な栄養がとれなかった固体は一齢のまま越冬する。しかし、羽化するのは7月~8月と決まっている。それは、交配の相手を探さなければならないからである。例え成虫になったとしても交配相手がいないのでは、子孫を残せない。そのタイミングを合わせるために、幼体時期を調整するのだ。やはり昆虫は凄い。
 そうなると疑問が。越冬する固体は、エサをどう確保するのか。それはご他聞に漏れず、休眠というか、冬眠となるらしい。固体によっては、3年掛かるとのこと。成長にこれほどの差がある昆虫も珍しい。

第一話

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