そして、ウスバカゲロウに
繭を見つけてから10日ほど経った夜。ペットボトルに蠢く怪しき影が目に入る。就眠前だったが、部屋の明かりをつけると、そこには透明な長い羽を携えたウスバカゲロウがいるではないか。
ケースを手にとって眺めると羽化用に入れた細い枯れ枝に必死でつかまっているウスバカゲロウがはっきりと確認できた。自然下で目にしたならば、ただの虫かもしれないのに、その透明感に輝く姿は感動さえ呼ぶ。産まれたての子馬のような弱々しいながらも、全身からは生命力が漲っていた。ただ、狭いためか、長い羽は十分伸ばしきれていない。
羽を痛めないように注意しながら、ウスバカゲロウをケースから取り出すと、脆く薄い羽をゆっくりと広げる。想像以上に大きい。その姿は、感動を通り越して崇高さを感じる。河川敷で大量に発生したら不快にしか思えない虫は、誕生の瞬間は息を呑む美しさだった。しばらく指に乗せて、うっとりと見とれてしまう。とにかく透明な長い羽が目に付き、小さな身体で支えている姿は神秘的で、神々しいくもある。
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カゲロウは三日ほどで死んでしまう儚さが有名だが、このウスバカゲロウは成体になっても、2週間ほど生きるらしい。アリジゴクと同じで肉食とのこと。小さな昆虫をバリバリ食べるらしい。カゲロウ目は消化器官がなく、生殖機能しかないのだが、幼体同様アミメカゲロウ目の成体は逞しい。といっても、かなり小さな虫しか食べないので、飼育は不可能だろう。一説では、アリマキ(アブラムシ)を食べるらしいのだが、常時アブラムシを与えることは不可能だ。ここで自然に帰すことになった。最初の目標は果たせたので、羽化したウスバカゲロウは庭に放すことになる。
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