昆虫界最強のトラップ職人-13

昆虫界最強のトラップ職人-13

優曇華の花

 アミメカゲロウロ目でウスバカゲロウ科と最も近いグループの仲間にクサカゲロウがいる。前回の話でも触れたが、このクサカゲロウもカゲロウではない。成体と幼体の間に蛹の時期があるからだ。こちらの幼虫もアリジゴクと同じ大きな顎を持っており、容姿はかなり似ている。しかし、トラップはつくらずに、探索型の狩猟を行う。主食はアリではなく、アリマキである。そのため、アリマキジゴクとも呼ばれている。さすが近縁種。しかし、アリマキジゴクはアリマキ、つまりアブラムシを捕食してくれるので、農業関係者では重宝され、売買もされているらしい。生物農薬なのでオーガニック食品として役立っているのだ。いろいろな商売はあるものだが、アリにとってはどちらも迷惑な存在である。

大きな顎を持った顔(頭部?)はアリジゴクとほとんど同じ。背中にしょっているのはエサにしたアリマキの残骸。この戦利品で最終的には繭を作る。カモフラージュ用なのだが自然界の厳しさを顕している姿だ。


 このクサカゲロウは葉の裏側に卵を産む。時折、家屋に侵入したまま産卵する個体がいるが、その卵塊は“優曇華(うどんげ)の花”と呼ばれることがある。優曇華は3000年に1度花が咲くという仏教の経典にある想像上の植物である。優曇華の花を室内で見つけると、その家が火事になったり、病人が出るなど、災いの前兆とされている。逆に幸福になるという迷信もあるらしい。わたしは子供のころ、その家が貧乏になると聞かされた記憶あるのだが、地方によって異なるのだろう。優曇華はよく見つけたのだが・・・。それで貧乏なのか。妙に納得。
 優曇華に比べ、アリジゴクの卵は未だに見たことがない。砂の中なので、探すのが困難なためだろうか、写真でも見たことがない。

クサカゲロウの卵。別名「優曇華の花」。子供のころは、これを見つけると、とんでもないものを見てしまったような怖さがあった。

第一話

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