ヤマトタマムシ外伝 タマムシの住む町-1

ヤマトタマムシ外伝 タマムシの住む町-1

町ぐるみでタマムシの飼育・繁殖・観察・研究を目指す

 タマムシ採集でお世話になった民宿。訪ねるキッカケとなったのは玉虫の会だ。その玉虫の会の会長は民宿のご主人である。元々、タマムシが多く棲息する場所ではあるのだが、地元の人にとっては、その希少価値には特に気を使ってはいなかった。そんな状況で、タマムシに特化するようになったのは、子供たちの言葉だった。
 子供たちが求めているのはカブトムシであり、クワガタ。それは今も昔も変わらない、と思っていたのだが、民宿を訪れた子供にとっては、ショップでも目にするクワガタやカブトムシではなく、黄金色に輝くタマムシを初めて見ることで、興味はすっかり移ってしまう。「カブトムシでも、クワガタでもなく、ぼくはタマムシがほしい」それは純粋な言葉(つまり何も考えていない)だったが、それが会長がタマムシの繁殖を目指した理由だった。

やはり、この輝きは子供にも憧れる。


 この地方では子供が生まれたときに桐を植え、嫁ぐときに成長した桐で箪笥を作り、抽斗にタマムシを入れるという伝統があった。娘が幸せになってほしいと云う親の願いが込められたタマムシは、吉丁虫とよばれ縁起のいい虫とされたていた。そんな馴染みのあった虫だったが、気がつくと、その姿を身近で見る機会はすっかり減ってしまった。会長は一念発起し、一人で玉虫の会を発足する。

なぜ桐なのか

生まれたときに植えた苗が、お嫁に行くときに箪笥を作ることなどできるのだろうか。素朴な疑問ではあるが、それを可能にするのは桐という樹木の成長力だ。とにかく桐の成長は早い。15~20年で箪笥が作れるまでに成長するのだ。 杉は80年が必要なのを考えれば、桐は1/4の期間で加工可能な大きさになる。さらに防虫効果があり、軽量と文句の付け所がない。それなのに高価なのは、あまり植樹がされていないからだ。それは、ひとえに軽さゆえの弱さからだ。強度がなく、傷つきやすいため、保存・管理が大変なのである。

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