ヤマトタマムシ外伝 タマムシの住む町-4

ヤマトタマムシ外伝 タマムシの住む町-4

タマムシの住む町

 飼育施設はなくなったものの、タマムシへの愛情はなくならない。町のかしこにタマムシが産卵・孵化したと思われる朽木が置かれている。タマムシは大切な資材を傷める害虫だ。それをわかっていて放置するのは町ぐるみの考えである。そのため、この町では夏になると、タマムシが飛翔する姿を目にすることができるのだ(かといって捕まえることが簡単なわけではないが)。施設で繁殖を試みているときも、成虫が逃げ出したり、一部を放したりしたが、害虫だと拒否反応をする人はほとんどいなかったとか。
 タマムシは気温が30度以上になる正午前後に翔び交い、ケヤキやエノキの葉を食べる。温暖化の影響か、以前は7月~8月という短い期間だったのが、今では6月~9月まで見られると、今井さんは教えてくれた。タマムシにとっては棲みやすい環境なのかは疑問だが。とにかく、奥秩父の奥にある環境だからこそ、タマムシも住宅近くで生活ができるのだろう。このような地域は確実に日本から減っている。

羽化した成虫が朽木から這い出てきた穴が至るところで見れる。そのため枯れてしまった生木もあるが、誰も駆除することはない。タマムシの環境づくりは徹底している。

飼育中に死んだタマムシの鞘は天日干しをして、再利用する。生きたまま殺生することは決してない。昆虫の標本も許されない。小学生の夏休みの定番はタマムシなしになる。

第一話

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